ニッポンイチのイッポン

くだらんから見んくていいよ。

特にご飯中のひとはな。

 

 

みんなはニッポンイチの一本糞を見たことある?あたしはある。

 

あれは、2019年の10月のことやった。

三国ヶ丘FUZZっていう大阪のライブハウスが主催する野外フェスに出させてもらったときの話。

 

ちょっとだけ寒くなってきた頃やな。

 

その日あたしは会場到着して早々、道中で尿意の限界を迎えてたから機材車飛び出してトイレに駆け込んだ。

 

急いで個室を覗いていくも、1番目から和式、和式、和式…できれば洋式がいいからってことで1番後ろのトイレへイン。勢いよくズボンを下ろして座り込んで、さっきの光景の違和感に気づく。

 

和式…和式…和式… ん?なんか… いやいや、見間違いやったかもしらん。 でも、確かに何かあったような気がする…

 

あたしは早くその違和感を確かめたくて、用を済ませてすぐに洋式トイレを出て、手を洗う間も無く1番前の和式トイレの個室を覗いた。

 

あ!! やっぱりあった!!見間違いじゃなかった!!

 

 

 

 

むちゃくちゃデカ長い一本グソ!!!!!

 

 

見たこともないくらい、長い、太い、一本グソが和式トイレにポツンと、いや、ボトリとひとつ、産み落とされてた。

 

あたしはすぐに走り出した。もちろんメンバーの元へ。

 

「なあ!きて!はやく、やばい!今まで見たことのないくらいの、デカい、いや、もう、芸術的な、一本グソがある!」

 

2人はいつも、色んなことでたやすくはしゃぐあたしを馬鹿にする。その温度感が心地よかった。でも今回ばっかりは、絶対に2人に見て欲しかった。

 

「ええ、見たくないってそんなん!」

日頃から潔癖気味なみさちなら絶対にそう言うと思った。わかってる。ただ、あたしは見逃さんかった。彼女の目が"期待"に溢れてたこと。 ぴかはまだ見てもないのに膝から崩れ落ちて笑ってた。

 

3人でトイレまで走った。一本グソを見るために。 途中で、「あ!Hump Backや!」ってお客さんに指差されたような気がしたけど、期待に満ちた今のあたしたちの耳には到底入って来んかった。

 

トイレについて、いよいよご対面。 「流されてなかったらいいねんけど…」 あたしは急に不安になった。こんなに期待させといて、もう誰かに流されてしまってたら、もう2人に合わす顔が無い。

 

そーっと覗く。 冷静に考えると、他人のうんこを見るなんて普段ならあり得へんこと。ダイレクトで見るにはちょっぴり勇気がいる。

 

「あった!」

1番に声を上げたんは、「見たくないって!」とか言うてたはずのみさちやった。 あった、よかった、流されてなかった。 そこには浦安鉄筋家族に出てくるような、太くて長い一本グソ。

 

3人で腹抱えて笑った。膝から崩れ落ちそうになるけど、トイレやから踏ん張った。ふらふらになるまで笑った。

 

それからあたしたちは、トイレに行くたびにその一本グソを確認しては、まだあることを報告しあったし、その度に一本グソについて話し合った。

 

ー 何故誰も流さへんのか?

この答えはすぐに出た。多分、みんなもあたしたちと同じ「他の誰かにも見てほしい」って気持ちがあったんやと思う。暗黙の了解ってやつがあたしたちを始めとした会場にいてる全女子の共通認識になってた。あの一本グソにはそれくらいの芸術性を感じたし、実際にトリのうちらの出番前までは確実にあった。その証拠に、途中でトイレに行った時にも、知らんおばちゃんたちがあたしたちと同じように「まだあった」って言い合ってた。彼女たちの目は、完全に"少女"やった。

 

ー 本人は何で流さんかったんか?

問題はこっち。 「やっぱり本人もみんなに見せたかったんじゃない?」 とは言うものの、産み落とした側じゃないからほんまのことがわからへんくて、あたしたちは憶測でしか意見を出されへんかった。 でも帰り際、みさちがポロリ(ボトリ)とこぼした言葉に真実が隠されてた。

 

「てかさ、ティッシュ、捨てられてなかったよな?」

 

 

あ!!!!!!ほんまや!!!!!!

 

本来なら、拭いたティッシュが上に乗っかるはず!やのに、あの和式トイレには一枚もティッシュが捨てられてなかった!!!! てことは本人もやっぱり、1番きれいに見える方法であの一本グソを残してたんや。

 

見て、欲しかったんや。

 

 

えっ、てことは

 

ーちゃんと拭いた?

 

また新たな疑問がひとつボトリと生み落とされてしまったけど、あたしたちはもう満足で胸がいっぱいやった。

 

一本グソは、搬出終わって帰ろう頃にはもうなかった。それでもあたしたちの心の中にはずっとあって、帰りの車の中でも何回も思い出してクスクス笑った。

きれいな一本グソで、まだ笑える。

 

小学生時代の笑いのヒーローうんこは、20代後半に差し掛かった大人のあたしたちのこともまだ笑かしてくれた。

 

なんかわからへんけど、妙に嬉しかった。