ムム!
ムムがベッドの上で眠るようになってくれた。
9月の末ごろからやってきた白い柴犬のムム。
前の家では喘息持ちのお子さんがおったもんで、毛が抜けまくるムムはベッド禁止やったらしく、ウチに来てからもその教えが彼女の中でなかなか抜けず、「おいで」と呼んで一旦は乗ったとしても、一晩中眠ることは頑なにせんかった。
そんなムムが、冬に向かってく寒さからか、1ヶ月半ほど我が家で過ごしてきた慣れなのか、はたまた一緒に寝たい私たちの毎晩の「おいで」攻撃に負けたのか、ここ2、3日は布団の中で眠ってくれてる。
寝る前にベッドに来たムムが、朝起きてもまだ同じ場所で、少し形を変えて眠ってる姿を初めて見た時はとにかく嬉しかった。
そんなこんなでまだムムがベッドで眠るようになってまだ3日目くらいの今、夜中未明。
ふと目が覚めると足に確かな温もりと重み。
ムムは布団の中で私の足の上にアゴを置いてる。
かわいい。
起こさんように足以外の体勢をゆっり変える。だってせっかく布団の中で眠ってる。足にアゴまで乗せて!こんな貴重な瞬間を、逃したくはない。
そーっとそーっと。
再び眠る。
次にパチっと目が開き、iPhoneをのぞくと時刻はまだ午前2時半あたり。
たいした寝返りを打ててないもんで、腰が痛くて目が覚めたのだ。
また足以外の体勢をちょっとだけ変える。モゾモゾする。
それでもアゴは乗ったまま。かわいい。
そういえば寝室の扉の下の隙間から光が漏れてる。
多分、リビングからの灯り。
「今日は遅くなるかも」って言うてた夫がきっと、いつのまにか帰ってきたんやろう。
(夫は、私でも分かるくらい確実に遅くなる日でも何故か「遅くなる"かも"」と"かも"を付ける。夫なりの気遣いなのか、「俺は帰るつもりやってんけど…」の免罪符なのか。)
足にムムのアゴが乗ってて動けないので、リビングまで顔を見に行くことなく再び眠る。
そしてまたすぐ目覚める。
アゴはまだ乗ってる。腰痛い。まだ乗ってんのか。結構モゾモゾしても尚、まだ乗るアゴ。爆睡具合が伺える。愛おしい。
腰痛〜。
リビングからは相変わらず光が漏れてる。
今日は翌々日に控えるイベント、アメ天の打ち合わせ&決起集会やったとのこと。
私は足にムムのアゴが乗ってて動けないので、リビングにあるムムのために設置した見守りカメラを起動。
そしたら、ここ数日の疲れとお酒で、ムムと私が待つベッドまでは辿り着けず、リビングのソファで力付きた夫が確認できた。
自分の身体の下敷きになってしまってるブランケットの端っこのなけなしの布をギリギリ掛けてる。
寒かろうに。
今日も遅くまでお疲れさん。
布団をかけに行ってあげたいけど、私の足の上にはムムのアゴが乗ってる。
動くわけにはいかん。
ごめん。
再びの再び、また眠る。
が、ここ数時間十分な寝返りを打ててない私の身体は限界が来たようで、もう寝付けない。
家族や住む家が変わるなんて、人生の大事件を経験中のムム。
ここ1ヶ月半で少しずつ増えてきたイタズラやワガママも、「この人らなら受け入れてくれる」と思ってくれたが故の行動かと思うと、全てが嬉しくて愛おしい。
ずっと遠慮してたベッドに乗り、私の手を丁寧に舐め、布団の中で眠り、更には足の上にアゴまで!
この貴重な時間を、壊したくない。
でもごめん、ムム!
私の腰はもう限界や。
これから何十年も、布団の中で私の足にアゴを乗せてくれ!
心で惜しみつつ、足をゆっくり動かす。
アレ?
ムムはピクリとも動かん。
足をゆっくり引き抜く。
何故かアゴは足の高さをキープしたまま止まってる。
アレ?ムム、起きてる?
恐る恐る、足でムムを触る。
思ってた毛並みとは違うフワフワを足の裏で感じる。そして怖いくらいに軽い。
待ってくれ。
これ、ムムじゃない。
おい、これ、IKEAのデカぬいぐるみやんけ!
前の家からずっと私と眠り、今では毎晩夫の隣、ベッドの1番奥側を守るIKEAのデカぬいぐるみ。
布団の中で私の足の上にずっと乗ってたのは、まさにそいつ、クマの"ダンカン"のアゴやった。
私はここ数時間ずっと、ぬいぐるみのクマに気を遣い腰を痛めてたし、愛おしさに心を潤ませてすらいた模様。
もう太陽が登り始めて明るくなった寝室。顔を上げてムムを探すと、布団の上でしっかり眠ってた。ダンカンとは私の足を挟んで反対側、ぴったりくっついてる。
もうすっかり眠れんくなった私は、「犬 足元 眠る」で調べる。
ムムが来てから、何かを調べることが随分増えた。
検索履歴を見ると
「犬 バナナ 食べられる」
「犬 人間の手を舐める 何故」
「犬 みかん 食べられる」
「犬 手作りご飯 バランス」
「犬 納豆 食べられる」
などなど。
犬と暮らすのは初めてじゃないくせに、今まで実家に居た犬たちの基本的な世話や健康管理は全部母がやってくれてたため、案外私が犬について知ってることなんて、ほんの一部の一部やった。
無責任に可愛がることだけをやらせてもらってたんやなと、ムムが来てから気付く。
そしてなんと、犬がニンゲンの足元で眠るのは、信頼の証らしい!
読めば、「飼い主さんへの信頼がなければ、ほかにどんな理由であっても、足元で寝ることはしないでしょう。」とまで書かれてる。
かわいい!!!!!!
だってムムは今、アゴまでは乗せてなくとも、間違いなく私の足元にぴったりとくっつき眠ってる。
あぁ、愛しき私たちのムム!
毎日しあわせをありがとう。
数時間ダンカンに気遣い腰を痛めてたという虚しさも吹っ飛んだので、ここいらでリビングの見守りカメラをもう一度確認。
夫は両手を足の間に挟んで、さっきよりも寒そうに眠ってる。
布団をかけに行って、あと少しだけムムと眠ろう。
かわいい、愛おしい、ムム!